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2006年3月23日

藤原正彦『国家の品格』──(2)「ナショナリズム」と「パトリオティズム」

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「愛国心」には2種類の考え方が流れ込んでいる、と著者は言う。
一つは「ナショナリズム」で、これは《他国のことはどうでもいいから、自国の国益のみを追求するという、あさましい態度》なので《戦争につながりやすい考え方》だという。
もう一つは英語でいう「パトリオティズム」に近く《祖国愛》と著者がよぶもので《自国の文化、伝統、情緒、自然、そういったものをこよなく愛すること》を意味し、《世界中の国民が絶対に持っているべきもの》だという。

この点は、なるほどと得心したところである。
例えば、またまたWBCの話題になるが、「国別対抗戦」がそもそも「スポーツ」に名を借りた「戦争」の様相を呈することになりがちなのは、この「ナショナリズム」を煽り立てるからであろう。
やたらに「日の丸」を振り回して、ニッポン♪チャチャチャ…、と浮かれる気分も分からなくはない。

だが、あまり誰も言わないことで気になっていることがある。
その一つは、代表監督の王さんが中国人であることを「ナショナリスト」の皆さんはどう折り合いをつけているのだろう、という点だ。
たしかにサッカーの日本代表監督は、オフト監督、トルシエ監督、ジーコ監督など外国人監督のほうが最近では多いくらいなので、違和感は少しもないのかもしれない。
それに、オリンピックほど「国籍」に厳密でない、という面もあるのだろう。

だが、サッカーでも出場する選手の「国籍」はそれほどアバウトではないはずだ。(その点はラグビーとも違う)
例えばサントス選手も、代表の資格を得るためには日本国籍の取得が必要だったのではなかったか。
この点が、私のいう二つ目のことで、WBCに参加した30人のプロ野球選手のなかには、「日本国籍」を持たない選手もいたのではないかということだ。

日本のプロ野球選手には、芸能界と同じように「在日」の人々が多い。(念のために「在日」というのは、「韓国籍」「朝鮮籍」の意味である)
ヒロシマの被爆者でもある元ジャイアンツの張本勲(チャン・フン)さんは、「純血」主義だった巨人に入団する時、外国人枠を節約するために「帰化」を要求されたある先輩投手の話をしていた。
王監督が凱旋会見で答えていたように、「国際試合の監督をするのは初めてなので…」というのは偶然ではあるまい。
今回も、長島茂雄さんが元気であれば、王貞治さんに代表監督が回ってくることはなかったのではないか。

30人の代表選手の中に、実際に何人の「在日」の選手がいるのか、私は知らないので、間違っている可能性もある。
ただ、以前から「在日」の選手ではないかと思っていた選手が何人か含まれていたからそう思っただけである。
言うまでもないが、WBCの日本代表チームに「在日」の選手が何人含まれていようと、監督が外国人であろうと、私は大歓迎だ。
そもそも参加各国のチームの選手たちの国籍が「参加国」と一致しているかどうかなどどうでもいいことだし、MLBの外国人選手のなかにはアメリカ国籍の選手もいるだろうし、その選手が「母国」の代表チームに所属している場合もあるのではないか。

要するに「国籍」とスポーツは何の関係もない、ということだ。
だから、スポーツで「ナショナリズム」を煽り立てるのは胡散臭い、ということである。
WBCで素晴らしいプレーを見せてくれた選手たちに心からの拍手を贈れば十分であって、「日本人であることが誇らしい」などと言うのは、中国人監督に失礼だし、いたとすれば「在日」の選手たちにも失礼ではないかと思う。
彼らは「日本人のために」「日の丸のために」懸命なプレーをしたのではなく、チームの勝利のために全力を尽くしたのだから。

ちょっと脱線しすぎてしまって藤原さんには失礼をしたが、次回はちゃんと本のことを取り上げます。

【関連記事】
2006年3月22日号「WBCはこれからどうなるのだろう
2006年3月14日号「WBCのお粗末
2006年3月11日号「藤原正彦『国家の品格』──(1)

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