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2006年4月 5日

プリオン専門調査会の6委員が辞任

Bse01

内閣府食品安全委員会プリオン専門調査会の12人の専門委員のうち、半数の6人が委員が一斉に辞任したこのニュースは、昨日のテレビではどの局でもかなり大きく報道されていた。
それだけインパクトのある出来事だったということだろう。
確かに、政府の諮問を受けた専門家会議としては、異常な出来事に違いない。

辞任した6人のうちの一人、品川森一前プリオン病研究センター長は、(以前の記事でも取り上げたように)2004年12月から「辞任しないで、勝手に欠席していることにしてくれ」ということになっていただけなので、事実上は辞任していた。
だから、実質的な新しい辞任は、残りの5人ということになる。

「輸入再開のための露払い」として利用する目的でつくられた調査会なので、辞任した6人の委員たちは、真面目に「科学者」であろうとした人ほど苦しんでこられたに違いない。
しかし、考えようによっては、12人のうちの6人が「良心的」な委員であったとすれば、「多数決」でも「言いなり」にならずに済んだのではないか、とも思うのだが、座長の吉川泰弘東大教授は今回も辞任はしていないので、特別な「権限」を政府から与えられていたのかもしれない。

いろいろな記事を調べてみたが、どの委員が辞任したのか、全員のお名前は確認できなかった。
確認できたのは、山内一也東大名誉教授と、2年半座長代理をつとめてきた金子清俊東京医大教授の二人だけだった。
金子清俊東京医大教授の言葉を新聞などからひろってみると、苦悩の一端は垣間見ることができる。

「国民に食品安全委員会の審議について説明する場で、私自身が『米国などからの輸入再開については、国内規制の見直し同様、厳格に評価する』と説明していたのに、米国で特定危険部位の除去などが適正に行われるという前提付きの不十分な審議しかできなかった。吉川泰弘座長(東大教授)から再任を依頼されたが、責任を感じたので辞任した」
「(審議の)全てのステップを慎重に公正にやっていこうという人が、辞められたと言えば、そうかもしれません」
「諮問(議論のスタート)そのものが妥当かどうかも評価できるような仕組みじゃないとですね、これは本当の独立性は保たれないのではないかと」

 金子教授は、両省がこれまで消費者らに「国内対策の見直しと米国産牛肉の輸入再開はまったく別の問題」と説明してきたにもかかわらず、国産の検査見直しに合わせ米国産について「リスクは国産と同等か」と諮問することを疑問視。
 「これまで表向き別の問題と言いながら、結局一体の議論だったことが明確になった」と指摘した上で、「私自身、国内の議論が米国産の輸入再開に利用されるのではないかとの消費者の懸念に対し、それは違うと説明して回った。結果的に虚偽の説明になったことの責任を取りたい」と辞意の理由を話した。(共同)
 
 ・政府はBSE検査を最初は感染状況の把握と、牛肉の安全性確保を兼ねる「スクリーニング」と位置付けたが、最近のOIE基準見直しをめぐる専門家からの意見聴取では実態調査に絞る「サーベイランス」と説明した。「検査対する政府の方針はいつ変わったのか。国内外での説明がぶれるようでは、消費者の信頼を得るこはできない」。
 ・日本の専門家は、検査が万能でないことは全頭検査の導入時から認めているが、検査が感染状況の把握と安全性確保を兼ねるスクリーニング検査という立場は一貫している。検査へのスタンスが揺らいでいるのは厚労・農水両省だ。検査緩和に対する消費者の困惑は政府自らがまいた種で、専門家に押し付けるのではなく、きちんと対処すべき。食品安全委員会と本委員会とプリオン専門調査会の間で意見の違いがあることも問題を複雑にしている。本委員会の一部の委員などはSRMさえ除去すれば牛肉の安全性は確保できると主張しているが、これは人の健康よりも貿易や経済性を重視した危険な考え方だ。それで危険は回避できるという科学的証拠はない。
 ・米国はBSEの感染拡大を防ぐ飼料規制に抜け穴がある。課題は山積み。それでも政府が「特定部位さえ除去すれば検査をしなくても生後20ヵ月齢以下の牛の牛肉は日本と同等の安全性といえるか」と諮問するなら、「この前提がそもそも成り立つのかを審議する必要があるだろう」。(日本農業新聞のインタビュー記事)

6人の辞任について、松田食品安全担当相は4日の閣議後会見で「4月1日にプリオン専門調査会の委員の再任を行った。当人の意向をうかがったところ、これまで十分働かせてもらったということで代わる方がおられた。(抗議の意思でやめたとは)私は受け止めていない」と話しているらしい。
ま、好きなように勝手なことを言ってればいいんじゃないの。

辞任した品川森一前プリオン病研究センター長は「省庁が望む結論ありきの委員会で、やっていられない。改選で議論に異議を唱える人がいなくなった」と話しているらしいから、きっと生え抜きの「イエス・パーソン」が集められたのだろう。
新しく任命されたのは、「水沢英洋東京医科歯科大教授や毛利資郎動物衛生研究所プリオン病研究センター長ら」と記事には書かれていたが、他の4人が誰か、今のところはまだ確認できなかった。任期は四月一日から二年間らしい。

諮問する時から「結論は決まっている」のだから、誰がやっても同じようなものかもしれないが、「想定外」の気骨ある専門家が…、いるわけないか。

【関連した過去の記事】
2006年1月21日号「米国産牛肉、成田の検疫で危険部位発見
2005年12月10日号「アメリカ産牛肉、ついに輸入再開
2005年10月21日号「福岡伸一『もう牛を食べても安心か』
2005年10月5日号「米国産牛肉、12月にも輸入再開見通し
2005年8月18日号「見倣うべき、アメリカの「国益最優先」
2005年7月29日号「プリオン調査会専門委員が昨年12月に辞意
2005年7月10日号「米、BSE感染牛と同じ群れで飼育の38頭を検査
2005年6月25日号「アメリカで2頭目のBSE感染牛を確認
2005年4月28日号「 中村靖彦『牛肉と政治 不安の構図』
2005年3月21日号「 アメリカ産牛肉の輸入再開か
2005年2月11日号「 BSE(牛海綿状脳症)、ふたたび
2004年8月4日号「 BSE「全頭検査」とは何だったのか?
2004年3年19日号「藤田紘一郎『(新版)謎の感染症が人類を襲う』(2001年/PHP新書)

【追記】
この記事を書いた時点では、(最初のほうにリンクしてある)「内閣府・食品安全委員会」の専門委員名簿がまだ更新されていなかったのだが、ついさっき「新しい名簿」に更新されていた。
その結果、新旧の名簿を比較すると、「辞任」した委員、「再任」された委員、「新任」の委員の名前がすべて判明したので、資料として付け加えておくことにする。
彼らの名前は、決して忘れられてはなるまい。
(「辞任」委員の肩書きは旧名簿のままで、「再任」「新任」委員の肩書きは新名簿による。)

《辞任》
金子清俊(東京医科大学医学部生理学第二講座主任教授)
品川森一(独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構動物衛生研究所プリオン病研究センター長)
横山隆(独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構動物衛生研究所プリオン病研究センター研究チーム長)
山内一也(財団法人日本生物科学研究所主任研究員)
甲斐知恵子(東京大学医科学研究所実験動物研究施設教授)
北本哲之(東北大学大学院医学系研究科学専攻教授)

《再任》
吉川泰弘(国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
小野寺節(国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
甲斐諭(国立大学法人九州大学大学院農学研究院教授)
山本茂貴(国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部長)
堀内基広(国立大学法人北海道大学大学院獣医学研究科教授)
佐多徹太郎(国立感染症研究所感染病理部長)

《新任》
石黒直隆(国立大学法人岐阜大学応用生物科学部教授)
門平睦代(国立大学法人帯広畜産大学畜産学部助教授)※ 平成17年10月1日に任命を行った専門委員
永田知里(国立大学法人岐阜大学大学院医学系研究科教授)
水澤英洋(国立大学法人東京医科歯科大学大学院脳神経病態学教授)
毛利資郎(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所プリオン病研究センター長)
山田正仁(国立大学法人金沢大学大学院医学系研究科教授)

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 私が、我が国におけるBSE問題で、最も危険だと感じているポイントは、いかさまノーベル生理学・医学賞受賞者であるスタンリー・プルシナー (Stanley B. Prusiner)が提唱している、狂牛病の発症原因は「異常プリオンタンパク質病原体」だとする仮説を未だに信じて、例えば..... [続きを読む]

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